訪問美容師には資格が必要?カットだけではない仕事内容

これからの高齢化社会で、ますます需要が見込める訪問美容師。そんな訪問美容師の詳しい仕事内容や必要な知識、資格を解説していきます。

訪問美容師とは?

自宅や施設、病院で施術を施す美容師

訪問美容師(理容師)とは高齢者や身体の不自由な方など、自ら美容院や理容院に行けない方に対してカットやカラーなどのサービスを提供する職業です。

サロンではなくお客様の自宅や介護施設、病院などを訪問して施術を行うのが特徴。仕事の内容自体は従来の美容師と変わりませんが、身体の不自由な方や認知症のある高齢の方が主なお客様であるため、通常とは違ったアプローチを必要とする場合があります。

お客様一人ひとりの事情に合わせて施術を行うため、コミュニケーション能力やきめ細かな気遣いが求められることがあるでしょう。スキルとコミュニケーション能力が求められる大変な仕事ですが、これからますます高齢化が進む日本社会では大きな需要が見込める仕事でもあります。

2025年の高齢者率(全人口に65歳以上の人が含まれる割合)では30%を超えると予想されています。このような状況を考えても、訪問美容師は非常に社会的な意義が高い仕事だといえるでしょう。

参考:厚生労働省|「今後の高齢者人口の見通しについて」【PDF】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf

訪問美容には定義がある

訪問理美容には、きちんとした法律上の定義があります。訪問理美容の施術が可能なお客様は、支援費制度を利用している方や要介護認定を受けている方に限られており、健常者への訪問理美容は禁止されています。

訪問美容師に必要な資格・知識

訪問美容師として必要、または取っておくべき資格

訪問美容師になるためには、どのような資格が必要なのでしょうか。これから訪問美容師を目指す方のために、詳しく解説します。

 

基本的に必要なのは美容師免許のみ

美容師免許を持っていれば、理論上はすぐにでも訪問美容師として働けます。ただし、高齢者や障害のある方がお客様となるため、福祉関連の知識やスキルが無いと思うように業務を進められずに、十分なサービスを提供できないのも事実です。

 

介護職員初任者研修課程修了資格

訪問美容師として働く際に美容師免許とあわせて持っておきたいのが「介護職員初任者研修課程修了資格」です。

これは在宅介護や訪問介護に携わる方を対象とした資格研修。訪問介護の入門資格と位置づけられています。介護の基本や介護現場でのコミュニケーション術、老化や認知症の理解といった知識・スキルを習得できるのが特徴です。

研修は各都道府県が指定する養成機関で実施されており、合計130時間の講義を受けます。最終的な修了評価に合格すれば修了証が与えられます。訪問美容師として働きたいのであれば、この資格を取得することを強くおすすめします。介護の知識がある人と無い人とでは、やはり仕事の入り方や進め方が違ってくるもの。同じ訪問美容師であっても、介護知識のある人のほうがより問題なく施術をしていけます。

 

訪問美容師として得ておきたい知識

介護の知識が不十分だと、利用者さんに間違った接し方をしてしまったり、大きな失敗をしてしまったりすることも十分に考えられます。最悪の場合、怪我をさせてしまかもしれません。

したがって、介護にかんする知識全般や身体介助の知識・スキルをしっかりと習得してから訪問美容師のスタートを切ることが大切なのです。

介護全般の知識

訪問美容師は視力が衰えている方、聴力が低下している方など、さまざまな症状のある方を対象にしてヘアスタイリングを行います。介護とはどのような方に必要なのか、介護施設の役割はどのようなものかといった介護全般の知識を習得することで、お客様の気持ちを汲み取ったり適切な接し方を考えたりするのに役立ちます。

 

・介護施設の形態やサービス内容

介護施設には大きく分けて「主に自立している方が利用する施設」と「主に要介護状態の方が利用する施設」の2種類があります。後者は、介護付き有料老人ホーム・グループホームと呼ばれる施設です。訪問美容師が訪問するのは、主に介護付き有料老人ホームやグループホームとなっています。

介護付き有料老人ホームは民間企業が運営していて、介護度が軽い方から重い方までが入居されています。グループホームは、認知症の方が介護者とともに自分たちで家事を行いながら、機能回復を図る施設です。

このように、利用者の介護度の重さやサービス内容は施設によって異なります。訪問美容師は、施設の形態に合ったサービスを柔軟に提供することも求められるのです。

・どんな資格を持った人が働いているのか

介護施設ではさまざまな有資格者が働いています。「介護職員初任者研修課程修了資格」は介護職の入り口と言われていて、そこから「実務者研修修了資格」や国家資格である「介護福祉士」を取得して施設の中核として働いています。

また、看護師やケアマネージャー、理学療法士などもスタッフに加わっている場合もあります。こうした方々と連携を取って作業を進めましょう。訪問美容師として働く際は、さまざまなスタッフが働く介護現場における自身の役割を、よく理解しておくことが大切です。

・要介護者が自宅でどのように過ごしているか

ご自宅にいる高齢者がどのような生活をしているかを知ることも重要です。ベッドから動けない方もいますし、自力で食事やトイレができる方もいます。さまざまなケースを学んでおくことで、どのような介助が必要か分かるでしょう。

介助(体のサポート)の知識

利用者さんと接するときに、どのように補助が適切かを学ぶ必要があります。福祉施設と個人宅で介助内容が変わるため、臨機応変に対応することが求められます。

福祉施設では、基本的に利用者さんの介助は施設の職員さんが行いますので、美容師側の介助は必要ありません。しかし、美容師がサポートできればスムーズに作業ができますし、職員さんの負担も減少できます。結果として、リピーター様の確保につながるかもしれません。

個人宅へ訪問する際は、美容師自身が介助する場合があります。主にベッドから起きてもらう、座ってもらうなどの動作を介助します。多くの場合はご家族が主体となって行いますが、ご家族も高齢であるケースもります。やはり、基本的な介助は身に着けておく必要があるでしょう。

 

訪問美容師として働くには?

ここからは、実際に訪問美容師として働く方法を解説します。

自ら開業する

自身で訪問美容師を名乗り、諸手続きを行って開業する方法。場合によっては、訪問先のエリアを管轄する保健所へ開業申請が必要です。都道府県や自治体ごとに規定が異なりますので、事前にどのような手続きや書類が必要かを確認しましょう。

開業は仕事の自由度が高く自分の都合の良い日だけ仕事を入れられるうえ、開業資金が必要無いのが魅力。その反面、顧客を獲得するための営業活動やクレーム対応なども一人で行わなければなりません。

訪問美容を行う企業で働く

もう1つの方法は、訪問美容専門の企業で働くことです。メリットは、すでに顧客を獲得している会社のため、定期的に安定して働くことができる点。また、社内研修などで訪問美容の基礎知識やスキルを習得できるのも魅力です。

デメリットとしては「報酬があまり高くない」ということがあげられます。企業によって異なりますが、1日に10人から20人以上のカットをしないと一般的な収入にはならないこともあるようです。

求人情報を比較検討しながら、自身の技術や希望する勤務形態に合った企業を選び抜くことが大切だといえるでしょう。

 

まとめ

高齢化が進む日本での訪問美容師の需要は、今後ますます高まっていくでしょう。ヘアカット・スタイリングは髪を切ってサッパリするだけではありません。訪問美容師は、美しく人を変えることに加え、つかの間でも介護の一部を果たす大変な役割も持ち合わせたお仕事です。