美容師と理容師と聞きますが、言い回しの違いではなく、実はそれぞれで特色があります。
ふたつの職業ではどのような違いがあるのかを、美容師と理容師の定義・受験科目の違い、仕事内容・ダブルライセンスを取得できるのかなどから紹介します。
Index
美容と理容の定義
美容師と理容師は髪の毛を切るという点では同じですが、「美容」と「理容」は法律によってしっかりと区別がされています。
美容師法第二条による「美容」とは、「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」。理容師法第一条の二項による「理容」とは、「頭髪の刈込、顔剃り等の方法により、容姿を整えること」となっています。
つまり、美容師はお客様の望む「容姿の美しさを叶える仕事」で、理容師はお客様の望む「容姿の清潔感を整える仕事」となります。
受験科目の違い
美容師・美容師になるには、厚労省が指定した美容学校の課程を修了したうえで、国家試験に合格するのが必須。
筆記試験と実技試験の受験を経て資格を取得します。筆記試験の科目は美容師・理容師共通ですが、実技試験が異なるのが特徴です。どのような科目になっているのか下記で紹介しています。
美容師
カッティング、ワインディング・オールウェーブセッティングの試験があるのが美容師の実技試験です。受験者が手がけた作品の仕上がり度や衛生面への気遣い・フィンガーウェーブなどのテクニックができているかといった部分を審査しています。
美容師資格の受験者数が1.9万人程度で合格率は60~80%ほど。思ったより合格率が高いと思った方もいるでしょう。それは、試験の難易度は基本的に変わらないことが理由です。国家資格取得のために、美容学校の質も向上しています。
理容師
カッティングは美容師共通ですが、髭やムダ毛を処理するシェービングの技術が審査対象となっているのが理容師試験の特徴です。顔剃りの仕上がりも審査対象ですが、整髪の技術・毛払い・顔面拭き取りまでもが含まれているのは、容姿を整えるのが仕事である理容師ならではだと言えます。
理容師資格の受験者数が1.3千人程度と、美容師に比べると人口は少なめ。顔剃りの難易度が高く、合格率は50~70%ほどと美容師に比べて低くなっています。
美容師と理容師の仕事内容の違い
美容師と理容師にはそれぞれ可能な業務範囲があります。
美容師は、パーマ・ヘアセット・メイクはできても、理容師はヘアセット、メイクができません。代わりに、理容師は顔剃りをできるのが特色です。
美容師は、化粧の一環として簡易的な顔剃りはできますが、顔剃りメインの仕事ができない特色があります。
美容師と理容師で業務が分かれているのはなぜ?

結論から言うと、昔に美容師と理容師の争いが起きたのが、業務が分かれるきっかけとなりました。
争いの内容は「パーマメントウェーブは、美容業界と理容業界どちらの業務範囲なのか?」という問題。パーマ戦争と例えられるほどの激しい対立がありました。
この問題を解決するために、厚生労働省は美容師法と理容師法で分類し、施術の範囲を決定。ざっくり言うと「美容師は男性のカットを行うのはNG」「理容師は女性のパーマを行うのはNG」とした規定です。
その後、時代が進んで、平成27年に美容師法と理容師法が改正。お互いの施術内容が緩和される形になりました。美容師は、理容師のように顔全体を剃れないものの、眉毛の手入れ、化粧に付随した軽い程度の顔剃りは可能です。
理容師は、パーマやヘアカラーの施術を行うことも許可されて業務の幅も広がりましたが、まつエクは理容行為に当てはまらないので、美容師の仕事になります。
美容師と理容師の給料・待遇の違い

美容師はアシスタントで技術やスキルを身につけ、スタイリストに昇格すると月給25~31万円程度になると言われています(店舗・地域差あり)。
美容師で稼ぐには、歩合制を採用している美容室に就職する・技術や接客術を磨いてたくさん指名をいただけるようにする、といった方法があげられます。また、集客力の高い店舗に勤める・客単価が高い・顧客の要望に合わせた施術ができるなど、環境やスキル差によって美容師の年収に差が生まれます。
理容師の平均月給は20万~31万円ほど。「容姿を整える」ことを目的としたお客様が多いため、流行や世情に流されず、カッティングの技術を極めていけます。
技術を磨けば磨くほど月収もアップしていく仕組みなので、美容師に比べると給料が安定しやすいのがメリット。ただし、技術習得期間であるアシスタント時代は月給15万円ほどなのも珍しくなく、生活面に気を配りながら練習をしなければならないという状況です。
美容師と理容師、資格を取るならどちらがいいのか

美容師と理容師どちらの資格を取ることがいいのか悩まれている方もいると思います。それぞれの特徴から、自分にあった資格を目指しましょう。
自分の能力などを考慮して考えるのがおすすめ
美容師の目的は、お客様を美しくすること。目的を達成するための施術はカットだけではありません。カラーやパーマなど幅広い知識が求められます。またお客様が理想とする美しさを汲み取り、髪を美しく整える能力とセンスも必要となるでしょう。
また、美容師は、美意識の高いお客様の接客機会が多いため、ヘアスタイル・ファッション・コスメ・トレンドなどの情報にアンテナを張り、美容に関する情報は常にアップデートできる能力が必要不可欠。美容師自身がオシャレ好きで、流行を追うのが苦にならない場合は向いているでしょう。
理容師の目的は、お客様の容姿を整えること。カット技術の高さのほか、シェービングの技術が求められるため、手先の器用さが肝となります。
お客様が求めるクオリティを担保するセンスは必要ですが、希望を聞き出すコミュニケーション能力、お客様が身につけているアイテムから、どんな系統のオシャレが好きかといった観察力も重要です。
理容師も、美容師ほどではなくてもヘアスタイルやトレンドなどの知識を追い続ける必要があります。また、繊細な技術を求められるシェービング業務があるため、特に集中力が必要です。トレンドを追うのは苦手だけれど、手先の器用さに自信がある方は、理容師に向いています。
両方の資格を取るのもあり
美容師と理容師どちらになるかを悩む場合は、両方の資格を取得するのも良いでしょう。
美容師・理容師どちらかの資格を所有していて、尚且つもう一方の資格に挑む際は、筆記試験が免除(一部科目は除く)されます。その分、実技に集中でき、短期で資格を得られる可能性があります。
将来、美容業界で食べていきたい方にとって、両方の資格を取ることに損はないはずです。
ダブルライセンスを取得するには
美容師と理容師の資格を保有するダブルライセンスの取得方法やメリットの解説をしていきます。
ダブルライセンスは取りやすくなった
ダブルライセンスというと魅力的に感じる反面、「両資格を得るまでの道のりが倍になるのでは?」と危惧する方もいるかもしれません。
確かに、これまでは、理容師養成学校と美容師養成学校の両校に通う必要がありました。しかし、制度が改正して以降、ひとつの美容学校に通えば、「美容習得者過程」「理容習得者過程」の認定が受けられ、試験資格を得られるようになりました。試験資格を得るまでにかける時間や費用を大幅に削減して、ダブルライセンスへのハードルが低くなっています。
ただし、全ての美容学校で適用されてはいませんので、ダブルライセンスに挑戦したい方は学校選びで失敗しないようにしましょう。
ダブルライセンスのメリット
ダブルライセンスのメリットは、仕事の幅が増える点です。
美容師免許のみだと施術ができない顔剃りが可能となりますし、理容師では施術できないマツエクも可能となります。トータルビューティーサロンの需要が高まってきている今、自分ひとりでお客様に多様な美を提供できるのは、美容業界で生き残る強みになるはずです。また、男性、女性とお客様の性別を問わずに営業できるのも、強みになるでしょう。
美容師か理容師か、両方かは自分で決めよう

プロの手を借りてオシャレを目指したい方の強い味方が美容師、清潔感ある身だしなみでいたい方の強い味方が理容師です。ヘアケアの仕事を通して、どんなお客様も施術していきたいなら、ダブルライセンスでオールラウンダーとして活躍するのも夢ではありません。
どちらの仕事にも優劣はありません。美容師と理容師の特性を知り、「自分のスキルがどちらに合っているのか」「どんなお客様のサポートをしていきたいか」で進む道を決めていきましょう。
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